ハリケーン・イアンがフロリダ州に上陸したとき、その「純然たる獣」とも言うべき嵐の風速は時速 248 キロ(秒速 69 メートル)にも達していました。いくつもの命が失われ、多数の住居が損壊しただけでなく、今も多くの住民が膨大な時間を要する復旧作業に直面しています。
このような規模の暴風雨災害から立ち直るためには、政府機関、電力会社、緊急サービスが連携し、風水害に対する復旧作業に取り組む必要があります。そして、この連携には迅速かつ正確なコミュニケーションが欠かせません。
この暴風雨により、フロリダ州の一部の地域では通信回線が利用できなくなっていました。嵐が過ぎ去った翌日、コリアー郡保安官事務所が Facebook に次のようなメッセージを投稿しています。
「ご家族や愛する人を心配されている皆さまへ:現在、電力が逼迫しており、携帯電話もインターネットも事実上使用できない状態です。これは高潮が押し寄せた沿岸部に特に該当します。携帯電話サービス用のポータブル基地局を現在準備中です。あなたの愛する人々は、あなたに連絡する手段を持っていない可能性があります。」
このメッセージには心が痛みます。元警察官である著者は、コミュニケーションの欠如が対応と復旧の取り組みを妨げている状況を何度も目にしてきました。経験上、コミュニケーションが欠如していると、迅速な対応が求められる場面であらゆる動きが鈍化してしまいます。
過去の気象災害からの教訓
緊急事態への備えを考える際には、歴史が最良の師となります。フロリダ州ではイアンによる被害からの復旧が進んでいますが、ここでは近年の暴風雨としてさらに大規模なハリケーン・マリアに目を向けてみましょう。マリアは 2017 年の活発なハリケーンシーズンに発生し、時速 280 キロ(秒速 78 メートル)という風速でプエルトリコに上陸しました。この嵐によってプエルトリコ島内の電力網が崩壊し、住民は数か月にわたる停電に見舞われています。
地域の電力供給が途絶えたことに加えて、家屋や橋梁、道路も大きく損壊しました。住民と復旧作業員は、重要な公共施設とインフラの両方を同時に失ったのです。また、ハリケーンの被害から数日間、プエルトリコ全土の携帯電話基地局の 95.6% がサービスを停止していました。さらに、プエルトリコ電力公社が島全体に展開していた無線中継器ネットワークも破壊されています。
こうして、コミュニケーションの欠如が壊滅的な自然災害の影響をさらに悪化させました。
損失と混乱の緩和につながる緊急時コミュニケーションへの備え
災害がもたらす課題はそれぞれ異なりますが、どのような場合でも、信頼性の高いコミュニケーション、調整、および計画を実施できることは対応チームの強みとなります。
ハリケーン・マリアの事後報告では、州および連邦政府機関の全体で準備と訓練を行うことが今後のより良い成果につながる可能性があるという点で、専門家の意見が一致しています。しかし、救助・復旧計画の実施に携わる者にとっては互いの情報共有が欠かせませんが、ハリケーン・マリアのケースではこれが非常に困難でした。
復旧時にはコミュニケーションが極めて重要となるため、報告書では次のような具体的な提言がなされています。
「コミュニケーションインフラは重要インフラとして扱うべきであり、より広範な復興計画の取り組みを強化するために復旧させる必要があります。」
言い換えれば、コミュニケーションは緊急事態の後にあらゆるものを復旧させるための鍵となります。そして、そのためには計画が必要です。この考え方は、通常業務に影響を及ぼすか、あるいは地域や組織でのインシデント対応につながる可能性のある自然災害やその他の緊急事態のすべてに対して当てはまります。
災害時における重大イベント管理のコミュニケーション戦略
ハリケーンやその他の自然災害への準備と復旧の際には、調整と協力が不可欠です。そのため、組織の計画の一環として、効果的な重大イベント管理(CEM)のコミュニケーション戦略とプラットフォームを採用することを推奨します。
これにより、初動対応にあたる人員と機関の双方が、サイロ化されボトルネックとなっているコミュニケーションから解放されます。また、ソーシャルメディアなど、本質的に信頼性が低く不適当なコミュニケーションチャネルに頼って意思決定を行う必要もなくなります。筆者は現場でプロフェッショナル向けの CEM システムや CEM 戦略に触れ、その強力な影響力を目の当たりにしてきたため、このことを身をもって理解しています。
また、このようなアプローチは、一部の機関が採用しようとしている消費者向けのアプリやメッセージングプラットフォームの使用に伴うリスクを排除します。
長期的な目標達成にも役立つ CEM アプローチ
多機関型の緊急時コミュニケーションプラットフォームは、嵐が過ぎればその役目を終えるわけではありません。マリアやイアンのようなケースでは、災害発生後に日常を取り戻すための大規模な復旧作業が行われますが、この作業には数か月、あるいは数年の時間を要します。
住む場所を失った住民には新しい住居をあてがう必要があり、また定期的な情報提供も不可欠です。中央政府から地元の業者に至るまでの膨大な数の関連リソースを調整する場合、効果的なコミュニケーションが持つ力を軽視するわけにはいきません。
適切なツールがあれば、ハリケーン・イアンのような大きな被害が生じた後であっても、クラウドベースのリソースによってすべての機関、対応要員、公共施設、一般市民とコミュニケーションを図ることができます。
BlackBerry AtHoc CEM プラットフォーム
組織が検討すべき選択肢の 1 つとなるのが、BlackBerry® AtHoc® です。このプラットフォームは以下のような特徴を備え、複数の重大なコミュニケーション課題を一挙に解決します。
- 複数の機関、部署、対応要員の間で、使用中のネットワークに依存しないコミュニケーションを実現
- クラウドに対応し、「帯域外」の別のネットワーク基盤で動作するため、現場が停電している場合でも動作可能
- 災害前に準備できるテンプレートを含んでいるため、ハリケーンなどの重大イベントによる被害が生じた場合でも、緊急事態管理者が策定済みの計画を実施・伝達し、必要に応じてリアルタイムで変更を加えることが可能
対応要員や緊急対応機関が適切なコミュニケーションツールを備えていれば、概して時代遅れとなっている従来のシステムでコミュニケーションを図って時間を浪費せず、住民の支援に注力できます。AtHoc は、組織が対応計画を準備し、スタッフを訓練し、緊急時のワークフローを改善する作業を支援するように設計されています。
緊急事態後の回復力
ここまで、コミュニケーションシステムの回復力についてさまざまな見解を述べてきましたが、これには間違いなく人間的な側面もあります。
かつて初動対応に携わっていた者としてしばしば驚かされるのは、緊急事態を経た後でコミュニティが一致団結し、高い回復力を見せることです。ハリケーン・マリアを経験したプエルトリコの住民がこのような意志の強さを見せたように、ハリケーン・イアンの被害を受けたフロリダ州の人々もまた、この姿勢を示しつつあります。
このような大規模災害からの復旧には何年もの時間がかかるかもしれません。しかし、コミュニティの全員が手を取り合えば、被災地は再び生まれ変わることができるのです。